霧の5次元 −女子大学祭潜入編−
好きな音楽でも共鳴する部分が多い相棒と俺。だから彼との長距離移動は車中の音楽も楽しみのひとつである。
初日の朝。相棒のチョイスはザ・バーズの『霧の5次元』だった。彼がこないだ思わずジャケ買いしてしまったというその一枚は、俺も聴いたことがなかったので胸が躍った。
起き抜けにテンションの低い俺たちふたりは、スピーカーから流れる軽快なメロディーによってようやく暖まってくる。気温は低いが、気持ちが良い秋晴れの朝である。
「Fifth Dimension…ディメンション… 」 助手席でジャケットを見ながらつぶやく相棒。
「どうしたの?」と俺。
「コレ、『霧』っていう単語はないんよねぇ。原題の『Fifth Dimension』はただ『5次元』って意味なんだ。でもなんで邦題は『霧の5次元』なんだろう…」
「ビートルズの『涙の乗車券』みたいなもんだよ。アレも原題は『Ticket to Ride』だけど、邦題には『涙』が付くでしょう」−俺は、我ながら良い返答だな、と思いながらアクセルを踏んだ。
「まあ何にせよ、当時の邦題を付ける人のセンスは最高だなぁ…」 結局、『霧』問題は何一つ解決していないのだが、なんとなく納得してくれた相棒。しかしコレを聴きながら行くと、正に霧の5次元へトリップしてしまいそうな感覚へ陥ってしまうが、通り慣れた道を走る我々は迷うことなく目的地へと到着する。
本日から、俺たちが「年間を通じてもっともテンションが上がる3日間」である、九州女子大学学園祭での出展なのだ。
毎年、我々のブースは正面玄関からまっすぐ進んでトンネルを抜けた先の売店の横っちょに設営する。学園祭は校内だけでなく一般にも開放されているので、「女子大だぁ!」と鼻息荒げて勇んで来るオッサンなどは、いきなり前方右側におんなじように物騒なカオしたオッサンふたりが並んでいる画に驚くだろう。
学園祭だけあってあちこちに模擬店が作られ、おでんやお菓子など売っている。フツーの祭りと違うのはこれらすべてが学生の手作りで、実にしみじみと美味しいのである。
「…いかがですかぁ…」の声に、自分たちのブースの設営もまだ済んでねぇうちから早くも本分を忘れ祭りムードに呑まれ、
「…いいなぁ、やっぱり学祭はいいなぁ…で…なに食う?」などと盛り上がるだらしないオヤジふたり。
我々の向かいは昨年まではソフトボール部の学生たちがはし巻きを売っていたのだが、今年は初等教育科のじゃがバター屋さんに変わっていた。そのテントはBGMでモーニング娘。のCDを大音量で鳴らしている。つい先程までオッサンのオッサンによるオッサンのためのロックにどっぷり浸りここまでやって来た私らとしては、芋焼酎が欲しいのにミルクセーキが出てきたような、なんだか落ち着かない気分に陥るが、郷に入らば郷に従えである。何人たりともここでボブ・ディランのシワガレ声など望んではナラヌのだ!
で、結局、その状況に二時間もすればすっかり慣れた。終いにゃふたり、気付けば口ずさみ、口笛を吹く。無意識にリズムをとり、歌詞まで覚えちゃった。
ふと木彫りの手を休めた相棒、踊ってる。曲に合わせて。
おやおや、今日は随分、ゴキゲンね。
でもこれはこれで、やっぱりかなり危なっかしい画ね…。
踊る相棒の隣で、母親のような眼差しの俺は思う。
「霧の5次元からLOVEマシーンに乗ってひょっこりひょうたん島に来ちゃったな…」
初日の朝。相棒のチョイスはザ・バーズの『霧の5次元』だった。彼がこないだ思わずジャケ買いしてしまったというその一枚は、俺も聴いたことがなかったので胸が躍った。
起き抜けにテンションの低い俺たちふたりは、スピーカーから流れる軽快なメロディーによってようやく暖まってくる。気温は低いが、気持ちが良い秋晴れの朝である。
「Fifth Dimension…ディメンション… 」 助手席でジャケットを見ながらつぶやく相棒。
「どうしたの?」と俺。
「コレ、『霧』っていう単語はないんよねぇ。原題の『Fifth Dimension』はただ『5次元』って意味なんだ。でもなんで邦題は『霧の5次元』なんだろう…」
「ビートルズの『涙の乗車券』みたいなもんだよ。アレも原題は『Ticket to Ride』だけど、邦題には『涙』が付くでしょう」−俺は、我ながら良い返答だな、と思いながらアクセルを踏んだ。
「まあ何にせよ、当時の邦題を付ける人のセンスは最高だなぁ…」 結局、『霧』問題は何一つ解決していないのだが、なんとなく納得してくれた相棒。しかしコレを聴きながら行くと、正に霧の5次元へトリップしてしまいそうな感覚へ陥ってしまうが、通り慣れた道を走る我々は迷うことなく目的地へと到着する。
本日から、俺たちが「年間を通じてもっともテンションが上がる3日間」である、九州女子大学学園祭での出展なのだ。
毎年、我々のブースは正面玄関からまっすぐ進んでトンネルを抜けた先の売店の横っちょに設営する。学園祭は校内だけでなく一般にも開放されているので、「女子大だぁ!」と鼻息荒げて勇んで来るオッサンなどは、いきなり前方右側におんなじように物騒なカオしたオッサンふたりが並んでいる画に驚くだろう。
学園祭だけあってあちこちに模擬店が作られ、おでんやお菓子など売っている。フツーの祭りと違うのはこれらすべてが学生の手作りで、実にしみじみと美味しいのである。
「…いかがですかぁ…」の声に、自分たちのブースの設営もまだ済んでねぇうちから早くも本分を忘れ祭りムードに呑まれ、
「…いいなぁ、やっぱり学祭はいいなぁ…で…なに食う?」などと盛り上がるだらしないオヤジふたり。
我々の向かいは昨年まではソフトボール部の学生たちがはし巻きを売っていたのだが、今年は初等教育科のじゃがバター屋さんに変わっていた。そのテントはBGMでモーニング娘。のCDを大音量で鳴らしている。つい先程までオッサンのオッサンによるオッサンのためのロックにどっぷり浸りここまでやって来た私らとしては、芋焼酎が欲しいのにミルクセーキが出てきたような、なんだか落ち着かない気分に陥るが、郷に入らば郷に従えである。何人たりともここでボブ・ディランのシワガレ声など望んではナラヌのだ!
で、結局、その状況に二時間もすればすっかり慣れた。終いにゃふたり、気付けば口ずさみ、口笛を吹く。無意識にリズムをとり、歌詞まで覚えちゃった。
ふと木彫りの手を休めた相棒、踊ってる。曲に合わせて。
おやおや、今日は随分、ゴキゲンね。
でもこれはこれで、やっぱりかなり危なっかしい画ね…。
踊る相棒の隣で、母親のような眼差しの俺は思う。
「霧の5次元からLOVEマシーンに乗ってひょっこりひょうたん島に来ちゃったな…」
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