となりの破壊王
物持ちが良いと言えば聞こえが良いが、単に「捨てきれない」症候群であるこの私。部屋をぐるりと見渡せば、他人に言わせりゃゴミと呼ぶべき品々もあちこちに散らばっている。
そんな調子だから、ふと気付けば15〜20年愛用してるなんてものもザラにあり、ここまでくれば愛着も強まる一方、という困った事態に陥っている。
先日、ジーンズ用の皮ベルトを新調したのだが、それまで愛用していたものは16歳の時に買ったもので、当時ジーンズ屋のお姉さんにかなり一方的な恋をしていた時期だからよく憶えている。考えてみると、以来雨の日も風の日も、健やかなる日はもちろん風邪の日も、失恋した日も悪酔いした日も事故った日も、なんだかこう書くと、フラれてヤケ酒、挙句の果ての飲酒運転による事故のようだがそうではないよ。まあとにかく、人生の半分を共にしてきたんだ、すっかり表面は剥げ留め金を通す穴は倍以上に広がり、なんとベルトそのものが俺の背骨というか「姿勢」に合わせ大きく歪んでいる。平均体重マイナス10kgを決して越すことがないガリガリくんだった少年時代から、酒の味を覚え徐々にビール腹へと変貌を遂げる俺を、一番身近で切実に感じてきたであろうコイツをもはや捨てられるハズもなく、今は自室の壁に誇らしげに飾ってある。ちなみにアメリカの老舗メーカー、Wrangler社製で、ここのが一番丈夫で長保ち、っていう自論を俺ぁ身をもって証明したのである。
さて、幾度目かの我が基地再編問題に鑑み、この度また事務所の荷物を整理した。膨大な量のCDを自宅に持って帰ることにした。これでも全盛期の3分の1くらいは処分したのだが、それでもまだ引越し用段ボールに3箱超はある。音楽に飢えている性格も昔とちっとも変わらないのだ。
早速作業に取り掛かるが、量が量なうえにケースはあっても中身がない、またはその逆なんかで整理に時間がかかり、すっかり時間がかかってしまった。黙ってやりゃあいいのに時折、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁめんどくせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」なんてファルセット利かせた絶叫も混じるもんだから、さすがに見るに見かねてか、手伝ってくれたのが、ご存知簡素な微笑み(シンプルなスマイル)が今日も愛らしい我らがシャチョさん。
なにしろ彼にかかればフツーに使えばそうなるはずもない(俺の)アイロンは砕け散り(俺の)掃除機は崩れ落ちる。粉砕された(俺の)食器など枚挙にいとまもないほどで、何故だか摩訶不思議なその威力に、ついた異名が破壊神・シヴァ(俺の中で)。
しかも特筆すべきはその破壊行為が本人まったく悪気もなく無意識、あるいは不用意のうちになされている点で、その赤子の如き純粋無垢なうっかりぶりにはこちとらもはや怒りもそがれ、「アララ、またやっちゃったのねー…」なんて引きつった笑みしか返せない。
そんな彼と、「えっさ」「ほいさ」の掛け声も勇ましく、まずはCDラックを運び出す。
120枚ほど収納できるラックが四つ。これを二つずつ金具で縦に連結して、二列に置いてあった。
最初の二つを、車に運び入れる。ガラス戸付きなので、運搬中割れないように向きも考え、慎重に。続いて残りの二つ。よっこらしょう。
そういえば、これを買ったのもまだ中学生の頃だったなぁ。あのアーティストの、あのアルバムが出た直後だった。予約特典でポスターもらって。洋楽を聴き始めて間もない頃で、当時のバイト代の半分以上をつぎこ
「ッパァァン…!!!」
……………砕け散った………。ラック、砕け散った…。一瞬、何が起きたのか解んなかったけど、棚板やガラスが足元に散乱している…。
なに?
いまのおと?
かやく?
かやくがでるの?
ゆびさきから?
…いろんな「?」が去来する。しかし真実はただひとつ。
ラックは壊れた。
この間、わずか数秒。しかしまるでスローモーションのように見上げた私の視線の先で彼(シヴァ)が言う。
「ああ…こうきたか………」
………フーン、そうきたか………。俺は声を絞り出す。
「アララ、またやっちゃったのね………」
こうなりゃCD運んだところで収納はできない。
すっかり片付けにやる気の失せた俺、一階へ下りてきた相棒捕まえ
「ねえねえ!『三国志』って最終回で全員生き返るんでしょ?」
なんて横山光輝マンガにキン肉マン的発想で困らせたりして遊んだ。
そんな調子だから、ふと気付けば15〜20年愛用してるなんてものもザラにあり、ここまでくれば愛着も強まる一方、という困った事態に陥っている。
先日、ジーンズ用の皮ベルトを新調したのだが、それまで愛用していたものは16歳の時に買ったもので、当時ジーンズ屋のお姉さんにかなり一方的な恋をしていた時期だからよく憶えている。考えてみると、以来雨の日も風の日も、健やかなる日はもちろん風邪の日も、失恋した日も悪酔いした日も事故った日も、なんだかこう書くと、フラれてヤケ酒、挙句の果ての飲酒運転による事故のようだがそうではないよ。まあとにかく、人生の半分を共にしてきたんだ、すっかり表面は剥げ留め金を通す穴は倍以上に広がり、なんとベルトそのものが俺の背骨というか「姿勢」に合わせ大きく歪んでいる。平均体重マイナス10kgを決して越すことがないガリガリくんだった少年時代から、酒の味を覚え徐々にビール腹へと変貌を遂げる俺を、一番身近で切実に感じてきたであろうコイツをもはや捨てられるハズもなく、今は自室の壁に誇らしげに飾ってある。ちなみにアメリカの老舗メーカー、Wrangler社製で、ここのが一番丈夫で長保ち、っていう自論を俺ぁ身をもって証明したのである。
さて、幾度目かの我が基地再編問題に鑑み、この度また事務所の荷物を整理した。膨大な量のCDを自宅に持って帰ることにした。これでも全盛期の3分の1くらいは処分したのだが、それでもまだ引越し用段ボールに3箱超はある。音楽に飢えている性格も昔とちっとも変わらないのだ。
早速作業に取り掛かるが、量が量なうえにケースはあっても中身がない、またはその逆なんかで整理に時間がかかり、すっかり時間がかかってしまった。黙ってやりゃあいいのに時折、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁめんどくせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」なんてファルセット利かせた絶叫も混じるもんだから、さすがに見るに見かねてか、手伝ってくれたのが、ご存知簡素な微笑み(シンプルなスマイル)が今日も愛らしい我らがシャチョさん。
なにしろ彼にかかればフツーに使えばそうなるはずもない(俺の)アイロンは砕け散り(俺の)掃除機は崩れ落ちる。粉砕された(俺の)食器など枚挙にいとまもないほどで、何故だか摩訶不思議なその威力に、ついた異名が破壊神・シヴァ(俺の中で)。
しかも特筆すべきはその破壊行為が本人まったく悪気もなく無意識、あるいは不用意のうちになされている点で、その赤子の如き純粋無垢なうっかりぶりにはこちとらもはや怒りもそがれ、「アララ、またやっちゃったのねー…」なんて引きつった笑みしか返せない。
そんな彼と、「えっさ」「ほいさ」の掛け声も勇ましく、まずはCDラックを運び出す。
120枚ほど収納できるラックが四つ。これを二つずつ金具で縦に連結して、二列に置いてあった。
最初の二つを、車に運び入れる。ガラス戸付きなので、運搬中割れないように向きも考え、慎重に。続いて残りの二つ。よっこらしょう。
そういえば、これを買ったのもまだ中学生の頃だったなぁ。あのアーティストの、あのアルバムが出た直後だった。予約特典でポスターもらって。洋楽を聴き始めて間もない頃で、当時のバイト代の半分以上をつぎこ
「ッパァァン…!!!」
……………砕け散った………。ラック、砕け散った…。一瞬、何が起きたのか解んなかったけど、棚板やガラスが足元に散乱している…。
なに?
いまのおと?
かやく?
かやくがでるの?
ゆびさきから?
…いろんな「?」が去来する。しかし真実はただひとつ。
ラックは壊れた。
この間、わずか数秒。しかしまるでスローモーションのように見上げた私の視線の先で彼(シヴァ)が言う。
「ああ…こうきたか………」
………フーン、そうきたか………。俺は声を絞り出す。
「アララ、またやっちゃったのね………」
こうなりゃCD運んだところで収納はできない。
すっかり片付けにやる気の失せた俺、一階へ下りてきた相棒捕まえ
「ねえねえ!『三国志』って最終回で全員生き返るんでしょ?」
なんて横山光輝マンガにキン肉マン的発想で困らせたりして遊んだ。
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